本日の詩

詩なり詩なり

2022-01-01から1年間の記事一覧

221220

小雪たち、風にのって はげしく舞い踊り 誰の懐にもななめから飛び込もうと 目まぐるしく景色を変えていて 道行く人は ほとんど視界をうばわれながら 師走の町を急いでいる 暖かな部屋のなかでこの 病める人は奥歯で後悔を噛み砕く 苦い思い出があふれでて …

221215-2

もう何も残ってないと思うような日 まだ詩が残っていたと思える日で 私のパンドラの箱に残された最後の光 ひとすくいの食べられもしない砂 他のすべてが徒労と思えても言葉よ 日本語よただそこに私がある

221215

冬の光は弱くてかぼそい腕を伸ばしてユキワリソウの鉢に届こうとするが風の一群に裂かれてばらばらにきらきらと散ってしまった メモ-昨年2月20日に書き未発表だったもの

221029

真相は夢の中夜はともしびの中朝は雨の中蟷螂は午後の窓の中 梅干しは飯の中アマリリスは霧の中牙は口の中胡桃は腹の中骨髄は汁の中街角は風の中紙切れは待つの中吐き出されたため息を拾ったら抱き上げて懐の中もう十分集めたから誰かみつくろって今夜はとう…

221019

みんなが好きっ てわけじゃない ものが好き 三月のわらび 四月のふき 五月のグリンピース 六月のセロリ 七月のピーマン 八月の自分 それから 十二月の春菊 今日の…

220831

空腹がひどくて 食べられるものがないか 探しているときに三角と四角が来た あいかわらず、ああでも 忘れられない端正なありかたああでもこれは食べられない 三角と四角しかないんですか 丸が食べたいんだけどそれはうまく言葉にならなくて 円が食べたいんで…

220829

わたしは昨日人間でした わたしは今日人間ですわたしは昨日人間でした あなたは昨日人間でしたかわたしは今日人間です あなたは今日人間ですか夏が終わります もうすぐ明日も来ます 息をひそめて死がすぐ横を 通りすぎる時に 気づかれないようにして わたし…

220622

ジュンサイを 英語ではウォー ターシールドと 言う今日は雨 梅雨のさなかの

220209

冬の光はあまりに弱いので 毛布にくるまる弱いままに冬の光はあまりに弱いので お湯に浸かって湯気を頬張る冬の光はあまりに弱いので 炬燵に入って眠りにつく夢からは覚めないように どこにも現実はないと仮定して押せば押すほど冷気 殺せるほど冴えた弱き光

220205

雪は 白くなるために 白くなって 冷たくなるために 冷たくなって 風に舞うために 軽くなって 儚く溶けるために 儚くなって雪はまた 白くなるために 白くなって 冷たくなるために 冷たくなって 風に翻弄されるために 飛ばされるほど軽く 儚く溶けてしまうため…

220128

地下を走って地下深くから 不覚にも地上に這い上がろうとすると 3240と17段の階段があって 僕の大中小の心臓はどれも役に立たない 息切れして代わる代わる 有給休暇を申請してくるから 自我に目覚めた近代の僕は 経済格差にあえぐ現代の僕に タクシーを呼べ…

220125

君の靴の中に どんぐりが飛び込んだ どうにかしてそのへんの 地面には落ちたくなかったからへのへのもへじの軌道を描いて 靴の中に着地した君のなめらかな髪が おりからの山風に 押し流されるよこしまな心のように たなびく間に君は膝の土を払って 立ち上が…

220123

日が渡る 天空の回廊に ばばあが一人住んでいる白い毛髪のあいだには 見果てぬ夢をたくわえて 吐息のたびに次の誕生日の 祝宴について思いをめぐらしている地球上の誰も 彼女のことを覚えていない顔の無数の皺のあいだには 胸踊る希望をたくわえて 微笑みに…

220122-2

梅の香りを夢見ている 1月のおわり春の光を夢見ている 1月のおわり冬が冬として 冬らしくふるまう 今日のような日にふさわしい行いとして 冬の終わりを 思い描くことができる はっきりと未来の輪郭は 今が厳しいほど 明確になるそのように生まれついて どこ…

20220122

朝は少しの塩と水 何かを練った団子を一握り穴の空きそうな靴で 二時間歩き 髪は枯れ草の焚き付け岩と岩の間にもぐり 息を忘れて 仕事する昼はスープと米 太陽に過去と未来を 少しずつ灼かれ もう酒を飲みたくて仕方ない爺さんが倒れて 動かなくなり 今日の…

220121

少しも空を見上げなかった 駆け回るのに忙しかった頃十代で彼は 雨は空の涙と書いた 友達は 陳腐の極みに吹き出して 彼は初めての詩を捨てた二十代で彼は 雨は水蒸気の成れの果てと言った 友達は その言い方を面白がって 彼は少し得意になりそんな 自分が嫌…

220119

沈んだ吐息が 互いの行く先をまさぐりあう 都市の横顔の 片目は涙ごとえぐられて 木の実が埋め込まれている それは思い出せないほど 痛ましい幸せの香り倒れた住民の 幸福な思い出のポケットから 散らばった夜はこうした都市の特権 等しく市民に孤独を嗜む儚…