2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧
その後に来る 更に重い不自由にさえも 彼女は飽いてしまいました 幸福は常に発見されなければ ならないので あの人を飽きさせないのです 失くしやすいイアリングの片方 あの人にとって幸福は 偶発的な事故 最も弱っている時に 幸福な思い出に堪えかねて 未来…
あの人は幸せにしかなれないでしょう あの人はそういう人です あの人は道すがら 祭に出た屋台の味を かわるがわる食べ比べるみたいに 色々な不幸を味わってきました まるでそうしないと自分の人生に 必要なエネルギーが手に入らないように しかしどんな不幸…
風よりも 自由でありたい 沈丁花の強く薫る季節が また巡って来た 夜だった 自転車に乗っていた 小道の角を曲がって またもう一つの未来に 初めて 空気の重さを感じた 風のように と思っていた 自由でありたい 風よりもなお 新たな約束の日に
あの葡萄からは水色の匂いが しました。水色と言っても 空を薄めたような水色じゃなくて 緑色がうっかり変わってしまったような ちょっと狂ったような」 野ねずみはひげをひくひくさせて 野うさぎはつられてひげをひくひくさせて 「そりゃ、君、そういう色の…
「通り過ぎた後 葡萄の匂いがしました あの人からは葡萄の匂いがしました」 野ねずみがそう言うと 野うさぎは肩をすくめて 「そりゃおいしそうな匂いだね」 野うさぎがそう言うと 野ねずみは鼻をひくひくさせて 「そういう葡萄じゃないんです」 「じゃどうい…
あって しかも おいしい おいしい おいしい毒薬があるから 君喜んで と言いますと 梯子はちょっとひるんで まぁ そんなら おいらに のぼってみなと言いました 私はそれから梯子に のぼりだし のぼって のぼって のぼって もうどのくらいのぼっているか (完)
あって しかも おいしい おいしい おいしい毒薬があるから 君喜んで と言いますと 梯子はちょっとひるんで まぁ そんなら おいらに のぼってみなと言いました 私はそれから梯子に のぼりだし のぼって のぼって のぼって もうどのくらいのぼっているか
おうちがあるんだ 脚立のお母さんと 縄ばしごのお父さんと はしご車のなかで くるくる回るんだぜ そこで私ははしごに言いました 君んちにはなにか おいしい おいしい おいしい 物はあるのかい 私んちには おいしい おいしいせき止めと おいしい おいしい お…
みかんは言いました 君ぼくんちに来ないか ぼくんちにはおいしい おいしい緑があるよ おうちで緑は言いました 君ぼくんちに来ないか というよりだね ぼくんちに来やがれ ぼくんちにはおいしい おいしい梯子があるよ おうちで、緑のほうの おうちで、梯子は言…
駄目だ もう泣きそうだ 天候がこんなにも 不安定なので 雨雲は体内に 湧き上がり 空っぽの頭から 雨は降るらしい 目は少し光に 疲れたらしい
もし世界が白と黒とでできていて 思念の延長線上に歴代カリフラワー達が お辞儀しているとしたらやはりレモンの 一部をこっちに持って来なかったのだろう 途中で酸味を水晶の歯が かじり落とさなかったかわからない 私はレモンの一部を忘れてきてしまった だ…