本日の詩

詩なり詩なり

水色の人 20110807-2

あの葡萄からは水色の匂いが

しました。水色と言っても

空を薄めたような水色じゃなくて

緑色がうっかり変わってしまったような

ちょっと狂ったような」

野ねずみはひげをひくひくさせて

野うさぎはつられてひげをひくひくさせて

「そりゃ、君、そういう色の風だって

あるから」

野ねずみは深く頷いて

「あの人はそういう人なんです---だから

車に乗っていたって」

野うさぎは目を見張って

「君、車に乗ってる人の匂いをかいだのかい」

野ねずみは野うさぎを見上げると

「だってあんなにも紫色の匂い---君、

水色の葡萄はあんなにも濃い紫色の匂いを

放つのでしょうね」

さあ、もう野うさぎは落ち着かなく

「どうだろ、匂いに、色があるなんて、

ひょっとして、君、---ああ、もう行かなくちゃ」

野ねずみは取り残されて草の中

夕べの夢の続きを見るのです

(了)