2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧
これで二度目ってわけだ 彼女が大きな花束をもらうのは 一度目は一人の寂しがりの男から うっとりするような抱き方をする 眩しい砂漠のような あの薔薇は枯れてからが美しかった 二度目は数人の健全な人々から 彼らを生ましめた堅実な風土に 悪酔いして遁走…
まだ 息をしている ここにこうして横たわって 焦燥や苦痛に身を ゆだねることもできる 声を出して 叫ぶことだってできる 水や飯や糞尿の世話を 要求することだってできる 立ち上がって 歩くことだってできる あの木の実を 取りに行くことだってできる 砕けた…
しかし混迷の中に 立ち上がってくる 蛮勇はないものだろうか 橋の上から彼が呼んでいる しかし呼んでいたのは あなたではなかった しかしあなたはのぼってゆくのだろう あなたは言うのだ 「今、わたしを呼びましたよね」 あなたは言うのだ はるか遠い橋の上…
Sandra you said, I want to take your picture because I don't want to forget you, or you said, because I want to remember you In the garden of the Palace on a sunny day, rare in that country But I didn't say I didn't say like that I knew I …
笑ったり話したりすることに 疲れてしまうことがあるんだ 理解しつづけること 牢の中で 小屋の中で 建物の 全体の 家族の 人の あなたとの 間で あまりにも 長いこと 人間という 機能だったので ときどき なにかになりたくなるんだ 錆びた看板とか 海辺のゴ…
春の子春の子 つくしの子 野原で風が話してる 川の子川の子 かえるの子 水面で波が歌ってる 山の子山の子 わらびの子 小道で土が薫ってる 海の子海の子 くじらの子 波間で風が騒いでる うちの子うちの子 みんなの子 道で帽子が飛んでいる
白い卵をてのひらに 春の光に透かしてみれば いうにいわれぬ幸福感が あなたの体を包み込む 春の光に透かしてみれば あなたの心は嘘ばかり あなたは今日も叱られて 地面に何を投げつける 地面に何を投げつける 春の心に透かしてみれば あなたの心は嘘ばかり
前のめりな3月 今日は月曜日 駆けていく日常 うずまく真昼の風
あまやかな午後を見たまえ 公園に飛んでいる蜜蜂を見たまえ 木の陰で倒れている人を見たまえ きみは最善を尽くしたというのだろう それでもまだ足りなかったというのだろう においやかな午後を見たまえ 降り注ぐ日のひかりを見たまえ きみには想像力があると…
標本箱の虫たちも 動き出すでしょう 春になったので ピンで背中を 貫かれていることも 彼らは忘れてしまった 春になったので ユスラウメが 風に揺れる今宵 標本箱から一匹また一匹と 這い出した虫たちは 地上のルールを 忘れてしまった 開け放たれた窓から …
もうすぐ 桜が咲くでしょう もうすぐ 4月が来るのです もうすぐ 桜が咲くでしょう 物憂い 陽だまりの陰から 虫たちも 姿を現しはじめているのです 桜が咲くと きっと嵐が吹くでしょう その風は 花びらを散らすでしょう あの花びらは そんなにもやわらかい …
てんとう虫 春の光を受けて 翼を開いて 飛んで来い 飛んできて この手のひらに とまっておくれ てんとう虫 てんとう虫 春の日は 光のしずくを まきちらして アスファルトも 線路沿いの柵も どこもかしこも きらめいた おまえは この手にとまって あともう少…
呼ばれたら 返事をしなくちゃ なりません 君!と呼ばれたら はい!と返事をしなくちゃなりません ポチ!と呼ばれたら ワン!と答えなくちゃなりません 尻尾を振って はい!なんて言ってはいけません タマ!と呼ばれたら ミャー!と答えなくちゃなりません す…
つきあたりを右に曲がって 夜の春をつきぬけてみれば 沈丁花の狂おしく 常軌を押しのける香り
今日の気分はどう? 今日の天気はどう? 今日のご飯は何? しらみのような飯粒と 泥のような味噌汁 今日のあなたは誰 今日のあなたは笑っていない 今日の電車はどう? 今日の授業はどう? 見ているうちに先生は どんどん遠のいて 気がつくと机の上の孤島で眠…
わたしは以前 魚だった だから 海を見ると泳ぎたくなる わたしは以前 鳥だった だから 空を見ると飛びたくなる わたしは以前 馬だった だから 草原を見ると走りたくなる わたしは以前 蛙だった だから 池を見ると飛び込みたくなる わたしは以前 蝉だった だ…
あたたかな夢から目覚めたら いつもと同じみじめな朝 安物のパジャマに薄い布団 髪の毛は無政府状態で 風呂場の鏡には日々が入っている 赤茶色の丸い染みがついた 便器に放尿すると 今日も窓の外は隣のアパートの 白い壁 小汚い顔にうんざりしながら シャワ…
珊瑚色のブローチが 地球の片隅に落ちていた 見てごらん 雑踏を抜け 通りをまっすぐに歩いて 摩天楼の谷間に 君の死体が転がっている 君ははなはだ懐かしく 君の匂いをかいで 誓うんだ 生まれ変わったら 珊瑚色のブローチになって 地球の片隅に落ちていよう…
どうして 永遠に あなたにお会いできなくなることが ございますのでしょう 今日はうららかな春 花は今 開こうと時を待っておりますのに どうして 他に途がなかったので ございましたのでしょう 悲しみのあまり頭の中がが真っ白で それはいつか この悲しみを…
壊れることを 前提とした世界を やわらかく切り裂いて 薄明の中 君は自転車を走らせる 君は以前より 体が重くなったと 感じている 君は以前より 額にみにくいしわが増えたと 感じている 君は18歳 君は28歳 君は38歳 君は48歳 君は58歳 君は68歳 …
僕はピアノ 僕はピアノ 僕を弾いて 僕は荒野の中の 一台のピアノ 光の中 僕を弾いて ラヴェルの あの曲で 僕とあなたは一つになる 僕はピアノ 僕を弾いて 僕は瓦礫の中の 一台のピアノ 闇の中 僕を弾いて サティの あの曲で 僕とあなたは一つになる 僕はピア…
本日の詩 その指の 美しさの かすかに巻いた髪の 首筋の なめらかさの なつかしさの 覚えていられない くちびるの ため息の 骸骨の 暗さと まばたきの 誇らしさの 思い出について 今日は夢見よう 眠るまで