本日の詩

詩なり詩なり

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呼ばれたら
返事をしなくちゃ
なりません

君!と呼ばれたら
はい!と返事をしなくちゃなりません

ポチ!と呼ばれたら
ワン!と答えなくちゃなりません
尻尾を振って
はい!なんて言ってはいけません

タマ!と呼ばれたら
ミャー!と答えなくちゃなりません
すりよって
コケコッコー!と鳴いてはいけないのです
ああ
それもだめです
ピーピー
そんなに黄色く鳴いたって

ゴキブリ!と言われたら
さっと逃げなくちゃなりません
意気揚々とひざにのぼり
ほほえみを浮かべたって
あなたの誕生日を
だれもおぼえてなんかいません

プリン!と言われたら
つるんと食べられなくちゃなりません
陽気がいいからって
光がこんなにさして
空気が生暖かくなってきたからって
一人で電車に乗って
新しいネクタイを買いに行ってる場合じゃないんです

バケツ!と呼ばれたら
黙って
落ち着いていなくちゃなりません

いつもの君の場所
流しの下か
外の蛇口の近くに
居なくちゃなりません
夕方になったからって
あわてて飛び出して
呼ばれたついでに
路地の端のお肉屋さんで
残り3つのコロッケを
全部買い占めてはいけません

せめて1個にしとかないと
あとで雑巾が悲しむから
乾いてるのにあいつ
身もだえして
涙をふりしぼるぜ
最近ジャガイモを食べてないから


ポチ!と呼ばれたのに
ミャー!と答えて
銀色のお匙で
つるんと食べられたり

バケツ!と言われたのに
ワン!と答えたり
ましてや
あわてて
流しの下の扉を開けて
転がっていったり
無い尻尾を振ったり

プリン!と言われたのに
冷蔵庫が開いた途端
さっと逃げ出して
キッチンのすみにひそんだり
ほら!!カラメルソースが
べたべた床についてる!!

もうなにがなんだかわからなくなってる

君!と呼ばれたのに
はい!と
返事をしないで
どこにもいないふり
あなたの愛するカオスの中に
世界を投げ込んで
自分が誰だったか
忘れちゃってる

あなたの世界では
なんと呼んだら
あなたは答えるのだろう

先に返事をしてください
そのあとに呼ぶ
そのあとにきっと呼ぶから