心の中に小さなつるぎがあって
時々取り出すとちくちくとおのれを苛む
心の中に小さなつるぎがあって
時々取り出すとちくちくとおのれを苛む
そして橋の上に立つと風が
髪を飛ばしはじめる
髪は頭に根を下ろしたままどうにかして
風に巻き込まれようとする
風は私の中心も飛ばそうとする
心臓だの肺だのまとめて
まるで不要なものとばかりに
どこに?
私はもうありとあらゆる川に行ける
どの橋の上にも立つことができる
ありとあらゆる橋の上で
風に吹かれるだろう
風よ
私を海に飛ばしたいのだろうか
山に飛ばしたいのだろうか
けれども私はどんな風にも
吹かれ
どんな風にも耐えるだろう
橋が風に耐えるのならば
そしてあなたはきっと私を見つけるだろう
(街の雑踏では風も迷子になり
酒の吐息と人の壁でどこにも行けない)
そしてその広い腕を広げて
私を抱き寄せ抱きしめると
すっぽりと私は包みこまれた
私は夢を見ていたし
あなたの腕の中で私は
誰にも気づかれず陶酔の中で
春の苺に口づけるのだろう
何千年もの間涙を流すように
あなたは空を見上げていた
どこにいるのかも
私が腕の中にいることも
自分がそこにいることも忘れて
待て待て
行きは良いが
来てしまったら
もう戻れない
退くことも
止まることもできないこの先は
ただほの暗い
両側から囲まれるような道ひとすじ
まえにもどこかで書いたにちがいないが
きっとわたしは生という病にかかっていて
先がもう長くないにちがいないのだ
だから誰とも会わずに誰とも話さずに
日がな他人の競技を傍観することに
勤しんでいるのだ
他人はありとあらゆる競技に心を尽くして
スポーツに励んだり配偶者を出し抜いたり
敵対的買収を仕掛けたりありとあらゆる
場所で戦争をしようとしてお利口さんたちは
毎日素敵な殺傷兵器を地道にこしらえている
それは飛んでいったり飛んできたりして
その間にもまだまだ多くの子どもが生まれ
少しずつ日が短くなるようにただ
眠りと眠りの間が曖昧に短く溶かされて
世界がわたしから消えるのをひっそりと
待っているのだ 金木犀など愛でながら
コンが
ペイと
トウと出あって
そうだね
みんなで
トウペイコンだ
そうして
三人でお茶を飲んで小さな濃い味の
お菓子を食べたよ
次の日
ペイが
トウと
コンと出あって
そうだね
みんなで
コントウペイだ
そうして
三人でお茶を飲んで小さな濃い味の
お菓子を食べたよ
そのまた
次の日
トウが
コンと
ペイと出あって
そうだね
みんなで
ペイコントウだ
そうして
三人でお茶を飲んで小さな濃い味の
お菓子を食べたよ
なんのお菓子か知りたいね
教えない
太陽はまだ白い顔して
光をいっぱい打ちつけている
風はいい感じに強くなって
すらすらとした光の中を
小魚が水流を巻きとるように
どこ吹く風に吹いている
空が手ぐすねひいて
掴みどころのない
秋の夕暮れに
風邪や物思いや
知らないところにあった
しめやかな欲望の箱の鍵を
街中にばらまく匂いがする
右のぽっけにどんぐりみっつ
左のぽっけにどんぐりいつつ
転んで涙がこぼれても
ぽっけのなかにはどんぐりやっつ