本日の詩

詩なり詩なり

240205

はだしで水のへりをあるいていく

水が触れないように

長く弧を描いた砂の浜

足には小さな指が五本いて

それぞれに春を感じようとする

足首のあたりで折った

白のジーンズは光を受け

ハサミで値札を切ったときのことを

思い出す

 

この弧は長くて

水はどこまでも続いている

はだしでどこまで歩いて行けばよいのだろう

 

少しの機構を残して

なにかひどく

空虚な規範を抱えているのが

重い

240128

そして橋の上に立つと風が

髪を飛ばしはじめる

髪は頭に根を下ろしたままどうにかして

風に巻き込まれようとする

風は私の中心も飛ばそうとする

心臓だの肺だのまとめて

まるで不要なものとばかりに

 

どこに?

私はもうありとあらゆる川に行ける

どの橋の上にも立つことができる

ありとあらゆる橋の上で

風に吹かれるだろう

風よ

私を海に飛ばしたいのだろうか

山に飛ばしたいのだろうか

けれども私はどんな風にも

吹かれ

どんな風にも耐えるだろう

橋が風に耐えるのならば

 

そしてあなたはきっと私を見つけるだろう

(街の雑踏では風も迷子になり

酒の吐息と人の壁でどこにも行けない)

そしてその広い腕を広げて

私を抱き寄せ抱きしめると

すっぽりと私は包みこまれた

 

私は夢を見ていたし

あなたの腕の中で私は

誰にも気づかれず陶酔の中で

春の苺に口づけるのだろう

何千年もの間涙を流すように

 

あなたは空を見上げていた

どこにいるのかも

私が腕の中にいることも

自分がそこにいることも忘れて

 

 

231022

まえにもどこかで書いたにちがいないが

きっとわたしは生という病にかかっていて

先がもう長くないにちがいないのだ

だから誰とも会わずに誰とも話さずに

日がな他人の競技を傍観することに

勤しんでいるのだ

他人はありとあらゆる競技に心を尽くして

スポーツに励んだり配偶者を出し抜いたり

敵対的買収を仕掛けたりありとあらゆる

場所で戦争をしようとしてお利口さんたちは

毎日素敵な殺傷兵器を地道にこしらえている

それは飛んでいったり飛んできたりして

その間にもまだまだ多くの子どもが生まれ

少しずつ日が短くなるようにただ

眠りと眠りの間が曖昧に短く溶かされて

世界がわたしから消えるのをひっそりと

待っているのだ 金木犀など愛でながら

231010

コンが

ペイと

トウと出あって

そうだね

みんなで

トウペイコンだ

そうして

三人でお茶を飲んで小さな濃い味の

お菓子を食べたよ

 

次の日

ペイが

トウと

コンと出あって

そうだね

みんなで

コントウペイだ

そうして

三人でお茶を飲んで小さな濃い味の

お菓子を食べたよ

 

そのまた

次の日

トウが

コンと

ペイと出あって

そうだね

みんなで

ペイコントウだ

そうして

三人でお茶を飲んで小さな濃い味の

お菓子を食べたよ

 

なんのお菓子か知りたいね

教えない

 

230925

太陽はまだ白い顔して

光をいっぱい打ちつけている

風はいい感じに強くなって

すらすらとした光の中を

小魚が水流を巻きとるように

どこ吹く風に吹いている

空が手ぐすねひいて

掴みどころのない

秋の夕暮れに

風邪や物思いや

知らないところにあった

しめやかな欲望の箱の鍵を

街中にばらまく匂いがする