本日の詩

詩なり詩なり

20190219

するすると鯉は朱を
後ろに引きながら
逃げてみんなのいる
柳の下のどじょう池の
濁った水に潜り込んだ

僕もあんな風に
逃避と突進の軌跡を
誰かの残像に残してみたい
妄想を強く噛んだら
心の奥歯が欠けて
小ねずみが現れた

失くしたと思っていた
細く長くしなやかな尻尾

触れたいけどまた
失くしそうだから
しばらくそのままにして

池の丸い水草のしたで
ぽっくり口を開けた鯉の
鱗を見ていよう

鯉は水面に顔を表して
僕に頼むだろう
良くできた関連施設を
紹介してくれたら三年前の
契約はなかったことにしてやろう

それで僕はあちこちに電話をかけまくり
紹介状と錆びたナイフを用意して
舎弟の鮒を脅してみる

そんなにベーコンとオレンジジュースに
なりたいのか
鮒はベーコンは嫌だけど
と言う
それにしても毛深い鮒だ
お前本当に鮒なのか
鮒は最近もみ上げを
伸ばしはじめたから
僕のスクランブルエッグは
美容師が柔らかなパーマをかけた

鮒は助手席に戻ると
AC/DCをべたべた流し
姉のことなど話した

鯉は今ごろはもう
水草の下で彼女とよろしく
やっているだろう

これだから僕は空腹だ
寝る前に小ねずみがいるか
確かめたかったが
こわくてのぞけない

からの心に飢えて
自分の尻尾食っちゃったら
もう今日の続きには戻れない

僕は虚空にさまよったまま
泡ときどき鮒だ