本日の詩

詩なり詩なり

20120305私は決して

私は決して未来を夢見なかったので
今がほとんど架空の世界のようだ
白い壁と白い壁が出会った直角を見つめて
忘れてしまった歯医者の予約を思い出すと
やがて行くことの決してない空港が目に浮かぶ
私は決して未来を夢見なかったので
人類の構築した虚構の世界の
最も怠惰な登場人物のようだ
郵便配達のバイクとエアコンの乾いた音が出会って
二度と会うことのない人々を思い出すと
死んでしまった欲望が死んだままゆっくりと羽ばたき始める
私は決して未来を夢見なかったので
常に、悉く、outrageousなほど、
常にもがきながら、羽化しなければならない程、
弱く、未完成で、甘やかで濃厚な春の
空気さえ、恐れなければならない程。