本日の詩

詩なり詩なり

090405/23:17

日曜の午後
偶然に偶然を重ねて
生きる人々は
この雑踏の中で出会った

お互いを
一瞬一瞬で確かめて
わずかな差異を認め

互いにかすかな印象を
交換しながら
すれ違ってゆく

人ごとにあげられるだけの
祝福と称賛をあげたいと思う

若い紫陽花の葉の形をした
金の小船に乗って
小さな光の花びらを
肩ごとにまいて行くのだ

時を止められる魔法を持たず
写真やら日記やら思い出やら
あいかわらず
弱々しい手段に頼っている

すべてがかけがえのない
一瞬だとわかっているのに
この美しさを伝えることもできない

人ごとにあげられるだけの
祝福と称賛とをあげたいと思う

ひとびとはよくわからない
日曜の奇人を避けて
コンコースを足早に
通り過ぎていくけれども

今日会った他人の一人は
あなたをにらんでいたのではなく

小人となって春風を漕ぎ
惜しみない称賛を
与えようとしていたのだ

ただ一瞬の一部で
あったことについて

もう明日に
われわれは
会えないから互いが
生きているかどうかも
わからない

われわれみなが
紫陽花の若葉より
弱い
一瞬の一部だと
いうのは
ねえ
四月よ
不可避の中でも
悲しすぎる必然じゃないか