苺を炊いた清新な香りに
魂がよみがえる
一日の終わりが
曖昧な暮らしを送っていると
この一日この一日が
二度と来ない一日であることを
忘れ果て
安直に
疲れ果て
浅い眠りに朽ち果てる
昨日まで 一昨日まで 先週まで
昨年まで
十年前まで
何かを考えようとしていたのに
決断しようとしていたのに
今や結論の責任と
結果の痛ましさを恐れて
目に見えることばかり
人に言えることばかり
安らかな着地点ばかり
探そうとしている
かような
美しく
醜い
分別を
かつて
大人と呼んでいた事を
春の苺は思い出させる
砂糖と鍋に煮られたら
私など
(完)