今日 風は強く吹かないことにした
冷たい冬でいることに少々飽いたらしい
そうして雪を見守っていると
雪のひとひらひとひらは至って慎重に
どこに舞い降りるべきか考えながら
そのいくつかは何だかもう着地点を
決めかねて空に舞い戻りたいようにも
見えたけれど自らの重さと幾分かは周りの
動きにも気分を動かされて
逡巡の末に地面に散って行った
こうしてほとんどみんな消えてしまった
風は春のこと、桜のこと、日の長さについて
考えている、雪が消えてしまったが風は
そこに、ほら、そこだよ!!君のとなり!
そこに居てまだ雪のことを考えている
大丈夫僕忘れないよとコンクリートのかけらが
言った、撤去される前に作業員の
おじさんがくれた、手の中の
コンクリートのかけらがさ、駅から
ずっと歩いてきた私に小さな声で
どうやらこのちっぽけなコンクリートにも
いくつかの雪のかけらが舞いおりたらしい