本日の詩

詩なり詩なり

20151001

駅前はぐるりと
回って
何台かのタクシーが
とまったり動いたり
時々バスだいぶ
ぶんぶん言って
ぷしゅ、しーととまって
四角い、そんな
ロータリーの真ん中には
一本の木
生まれた時の
ことは覚えていない
ここに
連れて来られてから
ずっと
長い夢を見ている
いつか
どこかのしずかな山の
あんまりぼうぼう
木の生えていない
つまり
ややこしい
背比べなどない
そうはいっても
なかなか日当たりの良い
風通しの良い
斜面に引越して

良く眠り良い夢を
見るのだ
というささやかな夢
木は確信している
(そもそも木は確信
しやすい生き物なんだ)
その夢の中には
この駅が出てきて
自分は何か別のものに
なり
たとえばアオガエルとか
捨てられた唐揚げの紙袋にね
(カエルの唐揚げではないよ)
背の高い木を見上げて
深い
憧憬の念を抱くのだ
その木は自分より
ずっと立派でもっと
幹もがっしりし
もっと葉も青々と
茂っているだろう
そしてその木は
山に生えてぐっすり
眠りたいとは
思わないで何か別の
夢を見ている
何の夢か
当てられるだろうか