本日の詩

詩なり詩なり

20150815

通路の右側か左側に寄って
並んでください真ん中には
かたよらないで下さーい、と
ずいぶん面積の狭い
お立ち台に立った
警備員らしき人が
くりかえしくりかえし
でんぐりがえしもしかねない
狂いそうな暑さ、華氏何度かの中
何度となく拡声器を使って
呼びかけているのだ
そこの花輪を持っている人、
と私たちは呼びかけられて
両端に寄るようにしてください
真ん中は開けてください
霊が通れませんから、と
ずいぶん押しの強い調子で
言われたものだから
人は左右に分かれたものの
真ん中ってばサーカスの輪くぐりみたいに花輪が丸く起きていて
先祖代々の霊達がこの輪をくぐり抜けて行くのかと思うと
私は笑ってしまったのだった
声のない笑みだったのにすかさず
例の警備員たら墓地では
笑わないで下さい、中には
侮辱されたと勘違いされる
ご先祖様もいらっしゃるかも
しれませんので、と注意して
見とがめられやすさ一族いちの
不運っぷりにぷりっと奥歯で
もろもろの焼きとうもろこしの
数年ごしの苦よもぎ、苦々しく
思い出など噛みしめていると
真ん中を通る霊のために通行制限をかけはじめ
どうやら祖先が多くなりすぎ
あの世から大渋滞
墓場でも朝から整理券を
一昨年から配り始めたはいいが
配布にちょっとした不正があって
一部の怒った霊達がもうこの世には戻らないことにしようと活動を始め
いつになくいろいろこじれている
模様
なんてことを前の叔母と伯母とが
延々としゃべっていた