小あじどもの中に
カニャカルがまじっていて
人間どもに食べられそうに
なっていたというのは
なかなかに語りつがれる
一件
あいつらしい最期と言えば
最期だがふらふら泳ぎまわった
挙句、この世でもっとも始末の
悪い奴らの姑息な網にて塵埃に
満ちた陸に歯向かう間なく
引き上げられ雑魚中の雑魚、鯵
なんぞとともにまとめて
売られかかるとは恥も千年
ましてや彼奴らに有毒なふぐと
して報じられるとは本人
死んでも死にきれないだろうか
とうとう死んで名を、と言っても
有毒物呼ばわりのふぐ扱いだが、
残して新聞沙汰にもなった、
えさをとるのも
おっくうがって
小枝くわえて
ハンノキの
周りをまわってたカニャカルも
いっそ毒を吐いてみたいと
毒づいてたのだけは
こんな風に叶えたもんだと
西の方にいったのは
あれ、もう10年は前だったが
あの頃はまだ、この辺は
スーパーマーケットや
ショッピングモールなんて
なかったし、
小あじももうちょっと賢い
生き物だったが