今日ぼくを松葉杖が訪ねて来て
どうもその節はお世話になりました
と頭をさげたぼくはそんなこと全然
予想していなかったしあんまり頭が
ぼさぼさだったし、昨日風呂に入らず
ソファで寝てしまったまま、起き抜けで
冷蔵庫には玉子しか入ってない
まさか松葉杖が訪ねて来るなんて
自分の人生に起こるとは思ってなかった
何て言っていいか全然思いつかない
ぼくは左足が(今やないのに)そこを
さわりたいように手を伸ばした
格好になってまあ言葉もなく
立ち尽くしてこれが大人の態度かお前
ひどすぎると思ってると松葉杖は
ぼくの義肢をほんのちらっと
思慮深い大人の分別ある眼差しで
ちらっと見てさ、これつまらないも
のですが、と言って、茶色の紙袋
押し付けるからぼくは受けとった
台風の中、行っちゃったよ、くる
くる回りながら、ぼくは急いで
紙袋見たら、松ぼっくりいっぱい
入った、なんだよこれダジャレか
と腹が立って壁に投げつけたら
全然なんでかわかんないけど
涙出てきた、悲しいとかじゃない
んだ、ただ出てきた、それで急いで
ぼくは目玉焼き作って食べた外の風
の音すごかった