ぼくらは徹底的に柔らかい飴を叩いていた
それを毎日叩けばカードにシールがもらえた
小さなシールは船の形をしていてぼくは
そんな船を見たことがあるように思った
海のない土地に生まれ育ったのに
カードにシールを集めればメダルが
もらえた金色に光る大人たちの喜ぶ
飴はぐんにゃりと伸びて台から
だらりと垂れ下がっていたすでにそれは
飴ではなくなっていて気味が悪かった
僕らはそれでも力いっぱい叩き続けていた
それを叩き続ければならないと
それを叩き続ければ幸せになれると
言われていたので僕らは叩き続け
飴がなくなっても叩き続けた
金色のメダルが引き出しの中で
すっかり錆びたころ見知らぬ人たちが
来て僕らの態度についていろいろ
聞いてきたけれど疑うということ
についてならそんなことは教わらなかった
それを言い訳にもならないという
その言い訳がなにかも僕は知らなくて
毎日その人たちをいらいらさせている
やがて彼らは僕らを飴のように
叩くだろう僕らは徹底的に柔らかい
飴のようにどこまでものびてゆくだろう
やがて彼らは僕らを飴のように
叩かずにはいられないだろう飴たちは
なくなってしまうまで叩かれたのだ僕らも
いつまでも叩かれつづけるだろう僕は
今のうちに船の幻想を見ておくんだ
靴紐をしっかり結んで爪を切っておくんだ