本日の詩

詩なり詩なり

090725/0044/ari-nomi

ぼくらは徹底的に柔らかい飴を叩いていた

それを毎日叩けばカードにシールがもらえた

小さなシールは船の形をしていてぼくは

そんな船を見たことがあるように思った

海のない土地に生まれ育ったのに

カードにシールを集めればメダルが

もらえた金色に光る大人たちの喜ぶ

飴はぐんにゃりと伸びて台から

だらりと垂れ下がっていたすでにそれは

飴ではなくなっていて気味が悪かった

僕らはそれでも力いっぱい叩き続けていた

それを叩き続ければならないと

それを叩き続ければ幸せになれると

言われていたので僕らは叩き続け

飴がなくなっても叩き続けた


金色のメダルが引き出しの中で

すっかり錆びたころ見知らぬ人たちが

来て僕らの態度についていろいろ

聞いてきたけれど疑うということ

についてならそんなことは教わらなかった

それを言い訳にもならないという

その言い訳がなにかも僕は知らなくて

毎日その人たちをいらいらさせている


やがて彼らは僕らを飴のように

叩くだろう僕らは徹底的に柔らかい

飴のようにどこまでものびてゆくだろう

やがて彼らは僕らを飴のように

叩かずにはいられないだろう飴たちは

なくなってしまうまで叩かれたのだ僕らも

いつまでも叩かれつづけるだろう僕は

今のうちに船の幻想を見ておくんだ

靴紐をしっかり結んで爪を切っておくんだ