煉瓦の塀に指先を当てながら
柿の木坂をのぼりきると
柿の木が一本夕日を背に
立っている幹も枝もいつも
いい具合に曲がっていて
これを見るためにここに来ると
いつだって夕日を背にしている
生まれたときのことはあいにく
覚えていませんいやそれどころか
おとといとさきおとといの区別も
できやせぬあすあさってはともかく
しあさってやのあさっての区別も
できはせぬきのうきょうはともかく
だから柿の木坂をときどきのぼって
勝手に夕日坂と呼んでいる
青い実が熟さないうちに落ちて
道にいくつも落ちてきたなく
つぶれているのを見ることができる
昨日の夜にここを通るときには気をつけなくちゃ