本日の詩

詩なり詩なり

090408/23:46

山の上の森も雪解けが近くなって
古木のうろから獣が出てくるんだ

君の見たことのない獣
バックヤードの小さな手洗い場の
小さな蛇口で手を洗い
強い洗剤で荒れた指先がひりひりと
ひりひりと痛む春の終わり

夜に目を光らせて
そいつはうろから出てゆくのだ
君が埃っぽい階段を
さっき掃除したのにいつまでも
埃っぽい階段を
上がってゆき
くしゃくしゃの箱から
最後の一本を
取り出す春の終わりに

君は夏の来るのを恐れているんだろう
命があちこちで火を噴くのにまったく
置いてきぼりにされているんだろう
屋上に来てもこんなにも埃っぽい
都市の夜の光は宝箱のようなのに
君の居場所はその光のどれでもないんだ

のっそりと獣は出てくるんだ
奴は夜を治めに出るんだ
空気はひんやりと重くて
ここのように乾いてはいないんだ
その最後の一本を吸い終わったら
見に行かないか、その似合わない
エプロンを置いて、バックヤードの
鏡の中のしけた顔ばかり見てないでさ

春の終わりに獣はうろから
出てゆくんだ、自分が大きくなってしまって
うろが小さくなってしまったらね

そしたらその獣
次はどこに行くと思う