見つかりません
夜だから
気が晴れません
春だから
悲しみません
嘘だから
欲しがりません
朝までは
見つかりません
夜だから
気が晴れません
春だから
悲しみません
嘘だから
欲しがりません
朝までは
悲しみでこの朝を
満たそうとしないで
仮定してみるのは
どうだろう
はじめからそんなことは
なかったと
今日が始まりだとして
記憶は鬼気迫る
夢のように鮮やかだけれども
彼女は海
それから柱
ときどき猫
たまに砂
今日は黄色い日
頭に黄色い花が咲いていたから
明日は赤い日
君が赤いTシャツを着てくる日だから
ドラムスティック持って
あさっては青い日
夕方が青いから
しあさっては白い日
朝から街が白くて
あとはずっと
黒い日
上から何で塗りつぶせるか
ぶどうのサイダー飲みながら
考える潮の側で
私たちが数えられていなかったとき
私たちが数ではなかったとき
私たちにまだ番号が付与されていなかったとき
私たちは何だったろうか
私たちが免許や資格や学籍や社員という地位や年金や健康保険番号や国籍や県民や市民という名の下に管理されていなかったとき
私たちは何ものでもなかったろうか
私たちが成績や給料や収入や売上や所得や体重や身長や血圧という数字を知らなかったとき
私たちは誰だったろうか
私たちが4年や6年や3年の義務教育や3%や5%や8%の納税を行わなかったとき
私たちは何もしていなかっただろうか
貯金もなく金利もなく為替もなく額面のついた金属や紙がなかったとき
私たちは生きた心地がしなかったのだろうか
七五三もなく誕生日もなく暦もなく
成人の数字もなく定年の数字もなく暦もなく
人口の総数も分からなかったとき
死んだら生命保険の金額が
殺されたら賠償金の金額が
わからなかったとき
自分の年も知らず
平均余命も知らなかったとき
私たちは生きていなかったのだろうか
私たちが数でなかったとき
私たちが野放しで
まったく管理されず
不可算な存在であったとき
曖昧で不確かで予測不能で
複雑で
その辺をうろうろ裸で裸足で歩いて
捕まえたり捕まえられたりしていたとき
うーんにゃ
そうでもない
また雪がふらんように
電話しといて
雷さんの番号しか知らんの
ならええわ
雷さんに伝えてもらい
もう
春ってことでええやん
あかんの
2月やけど
雪
君は冷たすぎて悲しなる
あらゆる情報が
手の中にあって
調べれば
得られる気がするのに
本当に欲しいものは
決して手に入らない
自分は何をしたいのか
自分は何をすればよいのか
おおまかな
ラインに沿って
退屈というものに
窒息し酸欠のまま
日々ぶつかってくる
無意味さの濃縮された
作業をこなしながら
仮死状態で
いつか来る本物の死を待つか
何もない
白紙に
目が眩むような
恐怖を覚え
一歩踏み出すたびに
途方もない数の捨てた選択肢に
ほぼ気を失いながら
それでも前に進むと信じて
同じところをぐるぐる回りつづけるのか
その真ん中の頃合いはなく
どちらも同じことなのだから
占いも
宗教も
カウンセラーも
親も
子も
連れ合いも
親友も
この恐ろしい孤独から
引きずり出すことは
できない
それほどまでに自由
飛べ
落ちるために
飛ばなくても
お前は落ちるだろう
落ちたところからまた
飛ぼうとして
もがきながら
舞い散る雪のように
深い地獄の底に
落ちてゆくのだろう